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DELIRIUM Vol.6

Evolveメンバーによるグループ展は、第6回目を迎えます。

本展では、アーティストたちが新作を発表し、それぞれの探求の成果を披露します。私たちはマニフェストに基づき、鑑賞者に感情を揺さぶる芸術体験を提供し、日常の抑圧から解放される場を目指します。アーティストたちは新たな表現の可能性を模索しながら、自己研鑚を重ね、より深い芸術的探求へと挑戦します。

進化し続ける彼らの創造の軌跡に触れ、新たな視点と感動に出会う特別な時間を、ぜひ会場でお楽しみください。

最終日は、ゲストに松尾孝之を迎え、アーティストトークを開催します。

どなたでも参加可能です。私たちの勉強会も兼ねており、長時間にわたるため、途中参加・途中退出も自由です。また、アーティストトークの間も、会場内は自由に鑑賞できますので、お気軽にお越しください。

会期:2025年3月17日(月)~ 3月22日(土)11:00 – 20:00  ※初日(3/17) 14:00 – 20:00 /最終日(3/22) 11:00 – 17:00
開催場所渋谷ヒカリエ 8/CUBE 
入場:無料
主催:一般社団法人Evolve Art & Design Japan

アーティストトーク: 3月22日(土)14:00〜 ゲスト 松尾 孝之

※マニフェストとは、あるドメイン内で芸術活動を行う目的や精神的内容を第三者へ示す公的な宣言です。

Manifesto

混沌に満ちた社会の中で、秩序を重んじる一方、人間の本能は抑制される。
その抑制は、時として個人の自由さえも制約する。
しかし、ときに人間の脳と心を覚醒させ、本能を呼び起こすプロセスも必要ではないだろうか。
ここでは、「人間の本能を呼び覚ます」ことを目的とした芸術活動を提唱する。

ⅰ. 秩序を肯定、否定するものではない。
ⅱ. コンセプトは必要としない。
ⅲ. 前衛的である必要はない。
ⅳ. 主観や客観は求めない。
ⅴ. エモーショナルを掻き立てるパッションやエッジは必要である。

Evolve Members Group Exhibition – 6th Edition

The Evolve Members Group Exhibition has reached its sixth edition.
In this exhibition, artists will showcase their latest works, presenting the results of their creative explorations.
Guided by our manifesto, this exhibition aims to provide viewers with an emotionally stirring artistic experience, offering a space for liberation from the constraints of daily life.
The participating artists continuously seek new possibilities in artistic expression, refining their skills and pushing the boundaries of their creative pursuits.

We invite you to witness their ever-evolving creative journey and experience a special moment of discovery, where new perspectives and inspiration await.

Special Event: Artist Talk with Takayuki Matsuo
On the final day, we will host an artist talk featuring guest speaker Takayuki Matsuo.
Everyone is welcome to join. As this session also serves as a study gathering, it will be a long-format event, allowing participants to enter or leave freely at any time.
Additionally, visitors are welcome to explore the exhibition space during the talk. Please feel free to stop by.

※ What is a Manifesto?
A manifesto is a public declaration that articulates the purpose and conceptual foundation of artistic activities within a specific domain.


Manifesto

In a society filled with chaos yet bound by order, human instincts are often suppressed.
Such suppression, at times, restricts even personal freedom.
However, isn’t it sometimes necessary to awaken the mind and spirit, rekindling our primal instincts?

Here, we advocate for an artistic movement that seeks to awaken human instinct.

i. It neither affirms nor denies order.
ii. A concept is not required.
iii. It does not have to be avant-garde.
iv. Subjectivity and objectivity are not prerequisites.
v. Passion and an edgy, emotionally stirring essence are essential.

Artist

よしもりむつこ  Mutsuko Yoshimori

Title: 会いたいな〜
Material: 素焼き陶土、和紙、ボンド、布、ジャバラホース

Title:I want to see you
Material: Terakotta, Paper, Bond, Cloth, Bellows hose

一見、おじいさんがロボットに変身したような造形物が出来上がりました。このホース(アームにも見える)のひとつを口に当て、もう一つを耳に当て、できればもう一つを他の誰かの耳に当て、「会いたいなー」と言って下さい。その耳元に他者から「会いたいなー」と言われたような感覚に陥るはずです。また、誰か別の人から「会いたいなー」と発してもらうとさらに楽しくなる装置なのです。この本体は素焼きの陶土で中は空洞です。ホースをいくつか伸ばすことで、さらに響きが変化する事に気付き、コレを人間のようなそして可愛いらしく造形してみたくなったのです。「会いたいなー」の言葉がどれだけ人を楽しませることができるのか?と言うひとつの実験です。電話というものは、他者の肉声を鼓膜を通過して、受け手の体内に取り込み、他者の存在を脳内にイメージさせる道具ではないでしょうか?私の20代初め頃は、まだ固定の黒電話が主流でした。受話器から聞こえる相手との親密な会話は、時間を忘れて繰り広げられ、互いの言葉が尽きる頃、最後に「会いたいなー」を交換するのです。そんな事をすっかり忘れて40年が経ち、ふとしたきっかけで、鼓膜の振動が再現された日から、私は自分の肉声をいかにして客観的に、まるで他者から言われたような体験をする為の装置づくりに夢中になりました。今回はその「会いたいなー」第1号です。

よしもりむつこ

よしもりむつこ  Mutsuko Yoshimori

Artist Statement
郵便局もコンビニもガソリンスタンドも無い地域「塚原」、この山間部に20年も暮らしていると「素材をお店で買い揃える」という発想から「身の回りにあるものに手をかけて欲しいものを作る」という発想に変わって来ました。頭の中の言葉やイメージから、どうしても作りたくなる明確な形が浮かんで来ます。土や竹やひも、紙、布などの素材がだんだん立ち上がって来るに連れ、今までの積み重ねられた時間が込められていきます。私を突き動かした言葉、忘れられない人々の大切にしていた事、そんなひとつひとつが思い出されます。形が出来上がり、誰かに見たり触れたりしてもらえる事は、まるで私が出会って来た人々の事を語り継いでいる様なものです。そこに喜びと少し安心感が生まれるのです。

Biography
1963年大分県臼杵市生まれ。大分県立芸術文化短期大学美術科卒業。絵画、写真、映像、立体、陶芸など、出会った表現方法、素材や道具など興味のままに試して来ました。20年前に陶芸の窯を据え置く為に、湯布院町の山間、塚原の地に夫と自作の工房を建てた事から、力のかかる柱や梁の組み方を考え、模索しながら、地面から立ち上がってゆくものの面白さに惹かれていきました。建築物は、そこに住まう人の時間や暮らしが積み重なって、一層の愛着が生まれると言う事を実感しています。「作ること」は限りなく私の存在意義と同一化している日々です。

ウルファート・ジャンセン Ulfert Janssen

Title: Thoughts Rift – 思考の裂け目
Material: アクリル、酸化メタルプレート

Title: Thoughts Rift
Material: Acrylic on oxidized metal

この作品は、 私の思考の中で 「心が漂い始める瞬間」を切り取って、視覚的に表現したものです。 そこでは、自由な状態でアイデアが浮遊し、 完全に創造性が解放される一方で、様々なアイデアが分離できなくなるまで重なりあい、 現実との境界がぼやけていきます。 思考の裂け目は、混沌と明晰さの間に挟まれた、理性の亀裂であり、思考の脆さを感じさせるものです。 思考の裂け目は、つかの間ですが、力強く、異なるレベルの何かへの入り口です。思考の亀裂は、精神の境界を広げる機会なのか、それとも現実を飲み込む危険な深淵なのでしょうか? この作品は、このような疑問と、人間の多層的な内面世界の不確実性を表現しています。
This work is a visual representation of the moment when my mind begins to drift. In this moment, ideas starts floating freely, my creativity being completely unleashed, while various ideas overlap until they are inseparable, blurring the boundaries with reality. Thoughts Rift is a crack in reason, caught between chaos and clarity, and a sense of the fragility of thoughts. Thoughts Rift is a fleeting, yet powerful gateway to something on a different level. Is Thoughts Rift an opportunity to expand the boundaries of the mind, or a dangerous abyss that swallows reality? This work expresses such questions and the uncertainty of the multi-layered inner world of humans.

Artist Statement
私の作品は、異なる世界のコントラストと融合を大きなテーマとしています。私の作品の特徴である、酸化鉄や炭化木を用いたキャンバスは、鉄や木という古代から伝わる素材に、「水、時間、火」という自然の要素を加えることによって、自然の偉大な力や、時の流れを表現しています。この独自のキャンバスに、モダンで鮮やかな色彩で大胆な構図のモチーフを重ねることで、一見相反するものが融合し、素材と形状の対話が起こり、プロポーション、色、質感との組み合わせ、対比が生まれ、物語がつむがれます。これらの調和のとれた矛盾は、相反するものが互いに反発する必要はなく、まったく新しくて魅力的なものを惹きつけ、創造することができることを表現しています。私の作品は、自然の偉大な力、人間の深い内面世界、さまざまな要素の対比と融合に焦点を当てています。ここでは、古風な美学から生まれた力を持つイメージやオブジェクトが浮かび上がり、現代的なテーマを表現する要素と相まって、深い内省を促すことを意図しています。私自身のカラフルでコスモポリタンなバックグラウンドを活かして、作品の中でさまざまな世界をひとつにまとめる独創的なアプローチを生み出していくことが、私の終わりなき探究であり、創作の原動力です。
The major theme of my artwork is the contrast and fusion of different worlds. The canvases made of iron oxide and carbonized wood, which are characteristic of my work, express the great power of nature and the flow of time by adding the natural elements of “water, time, and fire” to the ancient materials of iron and wood. By layering bold compositional motifs in modern, vivid colors on this unique canvas, seemingly opposing things are fused, a dialogue between materials and shapes occurs, and a story is woven by combining and contrasting proportions, colors, and textures. These harmonious contradictions express that opposites do not have to repel each other, but can attract and create something completely new and fascinating. My artwork focuses on the great power of nature, the deep inner world of humans, and the contrast and fusion of various elements. In this space, images and objects emerge whose powers derive from an archaic aesthetic and combined with elements expressing modern themes are intended to encourage deep introspection. Drawing on my own colorful and cosmopolitan background to find original approaches that bring together different worlds in my artwork is my never-ending quest and driving force behind my creations.

Biography
1972年ドイツ生まれ。12 歳から画家のBodo Olthoffに師事。1999年Art Center College of Designを卒業後10年間、芸術活動と並行して、ルノー・日産グループのカーデザイナーとして、バルセロナ、ソウル、東京でコンセプトカーや製品化モデルの開発を担当。2012年スイスに自身のスタジオを設立。コントラストと融合を大きなテーマにした絵画と彫刻を制作している。コスモポリタンなバックグラウンドと、多様な世界を結びつけるカラフルな探求心が反映された作品は、自身で開発した酸化鉄プレート、炭化させた木など、独自のキャンバスと鮮やかな色彩のコントラストを特徴としており、ドイツ・スイス・日本の個展・グループ展への出展、欧州パブリックアートコンテストへの参加など幅広く活動している。

森 拓実 (じゃのみち) Takumi Mori (janomichi)

Title: 阿多古和紙による海底のイメージ:明暗を識別+明暗・光の方向を識別
Material: 和紙、フォームボード、発光ダイオード

Title: Underwater landscape in Atago paper: Perceiving brightness + Perceiving brightness and the direction of light
Material: Japanese paper, foam board, and LED lights

原始的な生命が見た海底の景色を想像し、二点組の作品とした。目の進化は四段階で説明され、最初に明暗を識別し、次に光の方向を認識、その後ぼんやりとものが見えるようになり、最終的に高解像度の視覚を得る。前半の二つのモチーフを並べることで、目の誕生と進化を表現した。第一段階では光受容体細胞が体表面に現れ、「明暗を識別」では光を全身で感じ、波に揺れる光の柔らかな明滅を表現。第二段階では光の一部を遮る色素が発生したとされ、「明暗・光の方向を識別」では、暖かい方向に向かって漂う感覚を表現した。海は赤色の光を通しにくいため、多くの海洋生物は赤色を認識する細胞を持たない。第一段階は白黒の世界で、第二段階では色彩を得て海の青色を感じたと考え、それぞれの輝度と色合いを調整した。作品は、地元で生産される手漉き和紙(阿多古和紙)の質感から着想を得た。自然と人工物が重なる領域のような存在感を持ち、粗くて素朴な素材を、自分なりの文脈で讃えたいと考えた。
参考文献:『ナショジオ・セレクション 目の進化 動物たちの見る世界』(電子書籍)

森 拓実 (じゃのみち)

森 拓実 (じゃのみち) Takumi Mori (janomichi)

Artist Statement
私は建築設計・デザインとアート制作・活動を行き来しながら暮らしています。建築的なデザインプロセスを自覚的に操作することで生まれるアート、アートから得られる霊感が導く建築デザイン、といった具合に、私のモチベーションや方法論は流動的に変化します。その結果として出力される世界観を楽しんでいます。2024年には、建築家でありグラフィックデザイナーの森美欧と共にデザインユニット「じゃのみち」を結成しました。私たちは建築デザイン、アート、音楽、サブカルチャーの知識をもとに、表現活動を展開しています。また、普遍性のある事象を深く考察しつつ、地元である静岡県浜松市をインスピレーションの源として活動しています。ユニット名の「じゃのみち」は、諺の「蛇の道は蛇」に由来しています。この言葉の意味「大きな蛇が通る道は、小さな蛇も知っている」が面白いと感じ、私たち自身を「小さな蛇」に見立てて名づけました。

Biography
森拓実 1988年生まれ、三重県育ち、静岡県在住。大学院で建築学を専攻し、米国設計事務所でインターンシップを経験。現在は建築設計事務所に勤務。2020年、建築模型を再構成した「狭小弍面接道勾配結合体(幼生群)」でMONSTER EXHIBITIONに入賞し、現代アートの世界に踏み入れる。2024年、森美欧とデザインユニット「じゃのみち」を結成し、インフラへの警鐘を鳴らす「インフラストラクチャ(見えがくれする7つの立方体)」で第2回ECA展ファイナリストに選出。地元浜松市でホスピタルアートの提供や、地域おこし協力隊員との合同個展を開催。2025年春には「じゃのみち展 気賀」(浜松市立細江図書館)の開催を予定。

babacchi.com

Title: ループゾンビ
Material: R-PET紐、アクリル

Title: Loop Zombie
Material: R-PET cord, Acrylic

この作品は、廃棄されたR-PET素材の紐をつなぎ合わせ、かぎ針編みでチェーンのように編み上げ、さらにアクリル絵の具を滴らせたものです。リサイクル素材であるR-PETの紐は、一度は環境を考えて再生されたものの、やがて再び廃棄され、またリサイクルされます。この繰り返しの中で、「循環」「ループ」「反復」という言葉が思い浮かぶと同時に、ものの価値についても考えさせられます。本作は、そうした循環の中にある微妙なバランスを表現しています。

Artist Statement
毛糸という誰もが親しみやすい素材を用いて立体造形作品を制作しています。病弱だった幼少期、祖父母や両親からの影響を受けて私の想像力と感受性は豊かに広がりました。それは日本古来の森羅万象に神を感じる思想や、音楽、文学、映画といった文化的影響に繋がります。その経験を昇華し、未知なる領域への好奇心を作品に投影しています。毛糸のような日常的な素材を用いることで、現代アートにおける「素材の再定義」に対話を試みると同時に、クラフトとアートの境界を曖昧にすることで、現実と想像の境界線を問い直すことをコンセプトとしています。

Biography
1975年東京生まれ。2009年から独学で制作をはじめ、様々なイベントへ参加。2019年よりクラフト作品からアート作品へ移行。2019年〜2024年 MONSTER Exhibition 入選 / 2019年〜2024年 DELIRIUM -本能を呼び覚ますアート展- 渋谷ヒカリエ8F 8/CUBE / 2023年 第1回 Evolve Conceptual Art Exhibition 入選 東京都美術館ギャラリーA / 2024年 第2回 Evolve Conceptual Art Exhibition 入選 東京都美術館ギャラリーA

畦地 拓海 Takumi Azechi

Title: 果実の面〜伸びやかな欲望〜
Material: 漆、麻布、合板、和紙、卵殻、乾漆粉、金属粉、金箔
Title: The Mask of Fruit “Stretchable Desire”
Material: URUSHI(Japanse Lacquer), Linen Cloth, Plywood, Japanese Paper, Egg Shell, URUSHI  Tip Powder, Metal Powder, Gold Leaf

私は、古くから儀式に用いられるような、祈りや願いなどが強く込められたものに惹かれてしまいます。また、様々な民族に見られる衣装や文様、武器、装飾品などにも同じく惹かれます。それらのものには人間の本能的な強さが内包されており、それらはこちらをじっと見つめ、逃れられなくする。だから私は目が離せないのだと思います。今回、仮面の作品を制作しました。身に着ける仮面でなく、魔除けとしての仮面です。私は、仮面を自身とその他(生き物、もの、環境、文化、社会など)との間に立ち現れる、境界の形だと考えます。外から内への影響や内から外へ向けた発信を繰り返す中で、自身の内側から少しずつ、時に大きく表出するものが仮面として制作出来れば、と思います。

畦地 拓海

畦地 拓海 Takumi Azechi

Artist Statement
私は、人間も含む生き物が内包している、本能を呼び覚ますようなパワーを秘めたものに憧れ、それを自身の作品においても表出させたいと考えています。様々な民族の文化や生活の中にみられる仮面や衣装、壁画、武器、呪具、装飾品等のような、生きていくことへの本質的な祈りや願い、意図が込められたもの。それらと対峙する時、こちらの心の奥底をじっと見つめてくるように感じ、その強い存在感から目が離せなくなります。自身からこれまで、またはこれからの生き様のようなものが表出したとしたら、それはどんな姿かたちをしているのか。改めて私自身を見つめるような、知らない私を見つけるような、そしてそれが鑑賞者にも影響していくような、そんな不思議な作品を生み出せればと思っています。

Biography
畦地拓海(Takumi Azechi)は日本出身の漆芸家。京都市立銅駝美術工芸高等学校で漆に出逢い、富山大学芸術文化学部卒業、同大学大学院修了、タイへの留学を経て富山を拠点に国内外問わず活動を展開。主に漆を用いた平面パネル作品や乾漆の立体造形作品を制作。出身地である京都、現在拠点とする富山、その他金沢や大阪でも個展を開催している。2017より、ビエンナーレTOYAMAにも出展作家として選出。また「高岡で澄む」「EXOTICA」等のグループ展も企画し、出品者兼運営としての活動も展開。

小松 良明 Yoshiaki Komatsu

Title: Who?
Material: PLA,その他

Title: Who?
Material: PLA

作品は日本の有名な特撮テレビドラマの異星人の形をしていますが、カラーリングはヒーロー風に仕上げているので鑑賞者は形で判断するのか、色で判断するのか、混乱することでしょう。現在私達は大量の情報にさらされています。何が正しい情報なのか何が善悪なのかはその情報に触れた人に委ねられます。見た目でも人や物を判断することがありますが、視覚情報だけではその本質は分かりません。この作品は私たちが日々直面する情報の曖昧さや判断の難しさを表現したものです。

小松 良明

小松 良明 Yoshiaki Komatsu

Artist Statement
日本の伝統文化やポップカルチャーの要素を借用し形態・文脈を再構成し発展させることで、鑑賞者に既存の価値観や文化を問いかける活動をしている。制作において物体が持つ造形やブランド・歴史・コンテンツに着目し、作品の多くはヒーローや怪獣を模したソフトビニール人形や、ゲームカセット等のオブジェクトを素材として構成しており、それらが持つ象徴性や文脈を活かしながら、新たな表現を模索している。

Biography
1983年神奈川県生まれ。横浜美術短期大学専攻科を卒業後、横浜を拠点にミクストメディアを中心とした制作活動を開始。 近年の主な個展に「ULTRA AXIS」(Jinny Street Gallery、2024年)、「REMODELING」(渋谷ヒカリエ 8/ATELIER、2020年)がある。受賞歴として、2024年「J-COLLABO 第6回年次アート展」OSSAM ギャラリー賞、2023年「Independent Tokyo 2023」タグボート特別賞・審査員特別賞を受賞。さらに、2021年~2024年にかけて「MONSTER Exhibition」に入賞しており、東京・NY・ベルリンなど国内外で活動している。

吉田 絢乃 Ayano Yoshida

Title: Curtain Ⅴ
Material: 布、アクリル、カーテンレール

Title: Curtain Ⅴ
Material: Acrylic on fabric, Curtain rails

外との境界線にあり視線を遮るカーテンは家主のテリトリーを内包する布です。内包された私的な空間をカーテンに描画することによってそこに残る家主の気配を留めたいと思います。

吉田 絢乃

吉田 絢乃 Ayano Yoshida

Artist Statement
日本では長く使われてきたものには魂が宿ると伝えられています。 人が存在していた部屋や使用していた家具、そこに残る体温や匂い、 使い込まれたことによってできた傷や汚れなど行動の痕跡から その所有者の気配を想起させたいと考えています。

Biography
1987年東京生まれ。2013年多摩美術大学大学院美術研究科油画領域修了。アクリル絵具や水性塗料の塗膜を支持体とし、そこに日常を取り込む情報を描画する独自の方法で制作している。これまで個展に「吉田絢乃展」(ゆう画廊:2013年)「積層するひと」(FEI ART MUSEUM YOKOHAMA:2019年 ) 「画廊からの発言 ― 新世代への視点2022「territory」」(藍画廊:2022年)「Nesting material (Hideharu Fukasaku Gallery Roppongi:2023年) 、「アーツ・チャレンジ」(2018)「第22回岡本太朗現代芸術賞」(2019)等に入選。

江波戸 裕太 Yuta Ebato

Title: Umbrella
Material: 樹脂粘土、アルミホイル、真鍮線、針金
Title: Umbrella
Material: Resin clay, Aluminum foil, Brass wire, Wire

自己を理解するためには他者を見つめ、他者を理解するためには自己を見つめる必要があるという認識に基づき、私は他者との対話や自問自答の過程を視覚的に表現しました。お互いの繋がりを象徴する視線を可視化し、その視線を接合部品として用いることで、二人の人形を繋ぎ合わせて制作しました。制作過程では、主に樹脂粘土を使用し、完成形に対して固定的なイメージを持たず、予期せぬイメージの誘発を意図しました。手元で起こる意識的かつ偶発的な現象を手掛かりにしながら、形を作り上げ、最終的に辻褄を合わせていきました。

江波戸 裕太

江波戸 裕太 Yuta Ebato

Artist Statement
私は、あなたが私にとっての異物であり、私があなたにとっての異物であるという認識を基に、ヒトの形を持ちながらもヒトではない何かをテーマにした作品を制作しています。これらの存在は、形態的には人間に似ているものの、どこか異なる、または非人間的な特質を帯びています。この違和感に触れることで、私は自己と他者の関係性を問い直し、互いの異なる存在が持つ意味や尊さを再認識します。

Biography
1990年東京都生まれ。2011年日本デザイン専門学校グラフィックデザイン学科卒業。在学中に目にしたハンス・ベルメールに感化され線描を主体とした作品制作を始める。近年はドローイング作品に加え、立体作品の制作も開始している。2019年MONSTER Exhibition優秀賞受賞、第7回、第9回「ドローイングとは何か」展入選。

竹谷 嘉人 Yoshito Taketani

Title: stroke
Material: 紙

Title: stroke
Material: Paper cut layer

絵の要素としての筆跡をテーマに制作しました。絵の偶然性を否定して全ては意識的に形をデザインして数えきれない紙の層で構成されています。そのイメージは日々のドローイングとデジタルアート制作で感じる可視化される層と可視化されない内側に走る動力の経験を意識したものです。昨今の創作はAI生成を始め、アナログとデジタルと言うもので価値を左右するものに問題提起されています。意識的なのか無意識であるのかで作者の感情のようなものを観客は感じ取るらしいです。絵画では版表現から写真表現で繰り返してきた意味と無意味の交差を自身で超意識的に制作することで、創作の価値を凝縮することが目的です。

竹谷 嘉人 Yoshito Taketani

Artist Statement
1983年和歌山生まれ。東京藝術大学先端芸術表現科卒業。画家やデザイナーとして活動しながら絵と絵に纏わる全ての事象に興味があり異業種とのコラボを多方面で展開している。アパレルブランド「ha | za | ma」での専属テキスタイルデザインに従事し数々のインフルエンスとコラボ、アートパフォーマンスの分野では国内外でパフォーマンスやバトルでの世界大会出場の常連、博物館規模の舞台美術から四階建てビルの壁画などジャンルや規模に囚われないアート全てを独りでこなす一方、プロアマ問わず絵や音楽を創れる空間を提供するイベントを不定期開催。アートを限定しないように自身の制作や活動を持ってアート普及に努めている。

Biography
1983年 和歌山県生まれ。東京藝術大学 先端芸術表現学科 卒業。
受賞歴 ASIAGRAPH2009 優秀賞 / Corel Digital Art Competition 2009 優秀賞 / 講談社Birth 第一回カバーアーティスト大賞最優秀賞 / 東京藝術大学卒制作展 八谷和彦賞 / ギャルリー志門第3回公募「ドローイングとは何か」入選 / 神戸文化支援基金 2017年度 / 『L.A.B』日本優勝二連覇 / LIMITS World Grand Prix 三年連続世界戦進出 世界八位 / 書道アートバトル「鴉」全国大会出場 日本八位 / 2020アジアデジタルアート大賞展FUKUOKA 優秀賞
展示歴 2011 BankART Studio 卒業展 / 2012 シロタ画廊 グループ展 / 2013 artcomplex center of tokyo 個展 東京都美術館 グループ展 / 2016 池袋サンシャイン渋谷パルコ名古屋パルコ等 グループ展 / 2017 SPACE M 個展 / 2018-2020 品川O美術館 グループ展 / 2020 渋谷ヒカリエ 個展 / 2021 福岡美術館 グループ展

倉坪 杏奈 Anna Kuratsubo

Title: molting 3
Material: 布、OPPテープ

Title: molting 3
Material: Cloth in pieces and Packing tape

蛇や蝉が脱皮をして成長する様に、私も脱皮を経て成長していく様子を表現した。体の型を複数取り、レース生地を鱗の様に組み合わせ、手縫いで作っている。この作品には自分の中にある執着心や鬱屈した人間性から抜け出したいという思いが込められている。また、私を苦しめている、社会の中にある「〜であるべき」という固定概念から解放されたいという願いも込めて制作した。

倉坪 杏奈

倉坪 杏奈 Anna Kuratsubo

Artist Statement
1990年~2000年代初期の日本社会にあった混沌とした薄暗い雰囲気が私の心に強く残っており、作風もその頃流行していたオカルトやホラーの影響を受けている。人間関係と仕事のストレスが原因で体調不良になった経験を機に「自分らしい表現とはなにか」を求めて創作をするようになる。「恐怖の受容・執着からの解放」をテーマに奇妙で不気味だがおもしろい世界を表現できる作家を目指している。

Biography
岐阜県生まれ。国立富山大学にてデザインを学ぶ。2016年から本格的に創作活動を開始。「ECA Vol.2 」(東京都美術館)「MonsterExhibition」(渋谷ヒカリエ)をはじめ主に東京での展示を中心に、台湾、ロンドン、ニューヨークなど海外のグループ展にも参加。「MonsterExhibition2022」優秀賞受賞。布と梱包テープやビニールホースとテグスなど日常にあるものを組み合わせて使いながら、自己の深層心理を探る作品を制作している。

渡部 芳奈子 Kanako Watanabe

Title: 訳ありの静物
Material: 木机、果物、花瓶、皿、テーブルクロス

Title: Still Life with Imperfections
Material: Wooden desk, Fruits, Vases, Plates, Tablecloth

本作品では、伝統的な静物画を現実の空間に再現し、インスタレーションとして提示しています。ただし、ここに置かれているのは、現代の市場で「規格外」とされる果物や野菜です。静物画において果物や野菜は、宗教的・道徳的・哲学的な象徴として描かれるとともに、時代ごとの生活や文化を映し出してきました。本作では、これらのモチーフを現代の社会課題である「フードロス問題」に結びつけ、鑑賞者に問いを投げかけます。普段は市場に出回ることなく目に触れる機会の少ない「規格外」の食材が、ここでは静物画の構成要素として新たな価値を持ち、私たちの美意識や食の在り方について再考するきっかけとなることを願っています。

渡部 芳奈子

渡部 芳奈子 Kanako Watanabe

Artist Statement
日々のいけばなで培った造形力と色彩感覚を活かし、従来のいけばなの枠にとらわれない立体造形を追及している。幼少期から自然や生き物に関する興味を持ち、近年はいけばなを通して環境問題や現代の社会を生きながら感じる問題意識を発信している。

Biography
1991年東京都生まれ。早稲田大学大学院基幹理工学研究科卒業。いけばな草月流師範。2024年 第14回 Monster展入選、第2回 Evolve Conceptual Art Exhibition 入選、2023年 第96回 全日本いけばなコンクール 準特選。

iMA

Title: 転迷開悟
Material: 木の端材、破損仏、破損掛軸、金箔、銀箔

Title: TenmeiKaigo  〜from Chaos to Illumination〜
Material: Wooden offcuts, Broken Buddha statue, Damaged hanging scroll, Gold leaf, Silver leaf

散乱する端材が徐々に積み上がり、錆びた銀箔を纏った端材へと変化します。それらがさらに金箔を纏い、最終的には金箔に覆われた破損仏へと吸収され、一体化します。これは、無用とされたものが新たな象徴(傷つき破損しながらも輝く姿)へと生まれ変わる過程を可視化したものです。『転迷開悟』は、物質の変容を通じて、価値の再構築と自己認識の転換を示唆する作品です。それは、無価値とされたものに新たな意味を与えると同時に、私自身の存在の意味を見出すための試みでもあります。

im

iMA

Artist Statement
私は、錆や染み、破損など、一見「劣化」と思われる事象に魅力を感じ、あえて錆びた箔や流木、ガラクタなどを使用。それらが持つ不完全ゆえの味わいや、移ろいゆく儚さを生かしながら作品に取り入れています。制作の過程は、写経や瞑想のように心を鎮め、没入する時間であり、自我を浄化する行為でもあります。無価値とされたものが新たな姿へと生まれ変わるように、私もまた制作を通じて自己を肯定し、新たな価値を見出していく。このプロセスが、私の創作の基盤になっています。

Biography
1974年 札幌生まれ。大学では経済を学ぶ。現在、フォトグラファーとして仕事する傍ら、2009年ころ趣味で始めた日本画をきっかけに制作を行う。直近では2024年UNKNOWN ASIA 出品(梅田サウスホール)、MONSTER Exhibition 2024 入賞(渋谷ヒカリエ)。

岩館 えり子 Eriko Iwadate

Title: 殻へ解く
Material: 石膏、糸、金網

Material: Plaster, Thread, Metal mesh

私は身体(肉体)は自分という意識を留めている器であり殻であると考えます。人は、過去の記憶や、自分(個)としてのしがらみ、肉体、そして大きく捉えれば人間という概念、あらゆるものに囚われて生きていると思う時があります。そういったものから解放されたいという気持ちと同時に、自身の殻の中に籠りたい、外から遮断され安心を約束された自分という器の中で満たされたいという、相反する気持ちが存在することに気づきました。本作品ではこの2つの相反する心情をテーマとしインスタレーションとして表現しています。肉体という器(殻)から解放された意識(自分というものを構成していた記憶や感情などの様々な要素)を多色の糸であらわし、それは上へ伸びているのと同時に、下へと内包され身体の中へ入っていく様にも見え、異なるベクトルを表します。そして観賞者にも自己について深く見つめなおすきっかけを提示するのと同時に、自分が何を求めているのか、更に追求するための手がかりを考察し理解を深めていきたいと考えます。

岩館 えり子

岩館 えり子 Eriko Iwadate

Artist Statement
私は人間の無意識に備わる狂気性や危うさ、不完全で歪な美しさにとても心を惹かれます。それらをテーマとして作品を通し追求することで、少しでもそこに近づき自分という人間を深く掘り下げ、更に人間の本能的な本質に迫っていくことを目的としています。また壊して作るという行為を通じて身体的にも自分の感覚を共鳴させていくことでよりそこに近づいていくことを重要としています。そうした作品を通し、観賞者にも普段は気づかない自身の奥底にあるものを見つめなおすきっかけをつくることが出来たらと考えています。
Biography
1984年東京生まれ。川村学園女子大学心理学科を卒業後、東京デザイナー学院アート科に入学し卒業。心理学のコラージュ療法をきっかけに、布や糸、紙等を素材にしたコラージュの服飾を契機に創作活動を開始。割れた鏡、布や枝等の素材を組み合わせたコラージュの立体制作を始める。近年では石膏を用いたインスタレーションを展開し、アーティストインレジデンスへも参加。「Independent Tokyo 2018 」で審査員特別賞を受賞。「Monster Exhibition 」(2018)、神奈川県美術展(2023) 入選。

千坂 尚義 Hisayoshi Chisaka

Title: 絵巻色織 翠の一〜五巻
Material: 和紙、日本画画材

Titlle: Emaki iroori  volumes of green 1to5
Material: Japanese-style paintings material on Washi

物語、書、絵画、表装、全て私が手掛けたオリジナルの絵巻物になります。「色織」と題した物語は巻をまたぎ続いていき、古代日本のアニミズムの世界観を元に広がっていきます。書や絵画の表現的な部分もですが、書、絵、表装、どれが主役なわけでもなく、脇役なわけでもなくゆらゆらと空間を流れる様そのものにも、魂が互換可能な日本のアニミズムの精神が現れております

千坂 尚義

千坂 尚義 Hisayoshi Chisaka

Artist Statement
私は日本の古代思想、魂が万物に宿り、また魂が生物無生物問わず互換関係にあるものの見方に重きを置き、絵巻物や掛け軸の中で上記の世界観の再構築を試みています。互いの存在が表裏一体の関係で成り立つものの見方は裏と表を即物的に捉える合理社会に対して対照的で、現代アートや古典美術とは違った角度からアートや世界に対してアプローチをかけております。絵画空間で地と図が主従関係を強調しないように、また巻物の中で書と絵と仕立ての主従関係も顕にならないよう、鑑賞者の中で地と図の概念がゆらゆらと流動し続ける、まさしく器同士を魂が転々とする作品を心掛け制作しております。

Biography
千坂尚義は京都出身の絵巻物作家。予備校でアートを、大学で日本画を学んだ後、京都を拠点に自作の絵巻物「色織」を制作。コンセプチュアルアート展、第二回ECA(東京都美術館、2024)に出品し、一方日本画の展覧会、第三回石本正日本画大賞展にて大賞受賞(石本正記念美術館、2017)、京都日本画新展2025にて奨励賞・京都商工会議所会頭賞を受賞(京都えき美術館、2025)する等、分野をまたいだ作品発表を行う。