Digital Waste
素材:ゴミステーション、モニター、燃えるゴミ、段ボール、ゴミ袋
本作品は使われずに忘れられ、溜まっていくクラウドデータを回収し、フィジカルなゴミとして展⽰することで「ゴミ」として再認識させるメディアアート作品です。※ここでいうフィジカルのゴミとは、紙屑や⽣ごみ、ペットボトル、空き⽸など実世界に存在するゴミを指します。
「環境を汚染している廃棄物とは、フィジカルなゴミ以外にも存在しているのではないか」という問いから本作品の構想は始まりました。そこで着⽬したのが、我々が普段利⽤しているクラウドサービス内で蓄積したデータのゴミです。
Google 等のクラウドサービスは主に、世界中のデータセンターで管理されています。その数は世界中で800 万以上です。データセンター内の、 ハイスペックなPC を何千台も24 時間動かす電⼒、そのPC を冷却するための電⼒、これら⽣み出すためにこの瞬間もCO2は排出されています。現在、世界の電⼒消費量の0.6〜1パーセントをデータセンターが占めています。AI やIoT、⾃動運転など、データ集約型のシステムが⽇常に⼊ってきている今⽇の社会においては、将来的に情報量が爆発的に増えると予想されています。今後、省エネルギー対策が⾏われないと仮定すると、情報関連だけで世界の電⼒供給がままならなくなる恐れがあります。
⽇常から忘れ去られたクラウドデータや何気なく使う情報機器が間接的に環境汚染や、世界的な電気不⾜などの社会問題につながる恐れがあることを、思索するためのきっかけとしてこのような制作⼿順を取りました。
初めに100〜 200 ⼈程度の⼈の、クラウドサービス内に蓄積したゴミ(画像、動画)を回収します。リサイクルとしてデータを回収することで、微⼒ながらデータセンターの負荷は減るという考えです 。 次に画像、動画を⼀つの動画にまとめディスプレイに表⽰させます。最後に、ディスプレイをビニール袋に⼊れ、ゴミ箱に⼊れます
ビニール袋とゴミ箱に⼊れるという⾏為は、回収されたデータに、紙屑や⽣ごみのようなフィジカルなゴミがうける⾏為を当てはめたものです。これは、実世界には物質として存在しないデータをゴミと同義であるという意味を強調するためです。ビニール袋越しに⾒るゴミの映像は、ビニールという物理的なフィルターによって⾒えにくくなっています。⾒えにくい画像を⾒ることで忘れ去られたデータの蓄積、フィジカルなゴミの問題、さらには情報化に耐えきれなくなった未来を思索するきっかけを与えます。
参考資料
情報化社会の進展がエネルギー消費に与える影響(Vol.1)— IT機器の消費電力の現状と将来予測 —
https://www.jst.go.jp/lcs/proposals/fy2018-pp-15.html
https://www.jst.go.jp/lcs/pdf/fy2018-pp-15.pdf
https://www.jst.go.jp/lcs/pdf/fy2020-pp-03.pdf
Artist information
2001年生まれ。大阪芸術大学アートサイエンス学科4回生。
身体拡張をテーマに、浸食型の身体拡張や存在しない臓器などを扱った、アート表現を模索している。他には、 起ってしまう可能性のあるifの未来をSF的に思索し、独自のストーリーから作品を制作する。