昨年 ECA Vol.1 展示
ECA Vol.2
開催 御礼
一般社団法人イヴォルブアート&デザインジャパンは、第2回目の展覧会を無事に開催することができました。本展覧会では、昨年よりも多様性に富んだ作品が集まり、さらに多くの方々にご来場いただくことができました。心より感謝申し上げます。
ときに美的なものとは対照的に見えるコンセプチュアルアートですが、鑑賞者に深い思索を促し、芸術との対話を可能にする貴重な機会を提供します。本展を通じて、より多くの皆様がアーティストの思考に触れ、芸術との対話を楽しんでいただけたことを嬉しく思います。
また、本展覧会において、許 芯蓉さんの「善の距離」が最優秀賞を受賞しました。この作品は、弓道の哲学と現代アートを融合させた独創的な試みとして高く評価されました。惜しくも次点の作品も数多くあり、審査は非常に難しいものでしたが、全ての作品が素晴らしいものでした。
最後に、この展覧会の成功に向けて多大なご支援とご協力をいただいた全ての方々に心から感謝申し上げます。素晴らしい作品でご参加いただいたアーティストの皆様、運営に携わってくださったスタッフの皆様、また展覧会をご覧いただいた皆様にも深く感謝いたします。皆様のご支援があってこそ、このような充実した展覧会を開催することができました。今後ともご支援を賜りますようお願い申し上げます。
一般社団法人イヴォルブアート&デザインジャパン 代表理事 庄司みゆ希
第2回ECA展
ひとつの概念や過去の常識に縛られることなく、新しい価値を創造していく表現の場として、現代アートの普遍的な要素でもあるコンセプチュアルアートの展示会を開催します。
現代アートの消費活動が行われる中、一方で地球規模の危機や環境問題、不安定な経済等が混沌とし、今までの常識は変わろうとしています。本展は、このような時代だからこそ、スタイルや形式に捉われないコンセプチュアルアートに焦点を当て、アーティストにとって新たな創作のチャンスとなると信じています。
この展示会では、様々なコンセプチュアルアート作品が展示されます。作品は、鑑賞者に直接的な感情や物理的な美しさを提供するのではなく、むしろ思考のインスピレーションや内省を促します。
ぜひ、この展示会を通じて、単なる芸術作品の鑑賞を超えて、現代社会の課題や価値観に対する深い理解や共感を養い、また新たな発見や創造の可能性を探求ください。
We will hold an exhibition of conceptual art, which is also a universal element of contemporary art, as a platform for creating new value without being bound by one concept or past conventions.
Amidst the consumption activities of contemporary art, global crises, environmental issues, and unstable economies are causing chaos, challenging conventional wisdom. We believe that precisely because of these times, focusing on conceptual art that transcends style and form provides artists with opportunities for new creations.
Various conceptual art pieces will be displayed in this exhibition. Rather than providing viewers with direct emotions or physical beauty, these works aim to inspire thought and introspection.
We encourage you to explore beyond mere appreciation of artistic pieces through this exhibition, fostering a deeper understanding and empathy towards the challenges and values of contemporary society, while also delving into new possibilities for discovery and creation.
Artists
許 芯蓉、千坂 尚義、濱野 桃圭、su_ nosuke、じゃのみち、岩崎 由香、元井 康夫、安宅 陽果、ババ ユミ、ff(Ye Feng)、 倉坪 杏奈、唐杉 庸平、 大野哲幹 + 廣瀨蘭、 uki、 山下 弘匡、 渡部 芳奈子、 畦地 拓海
展示会名 Exhibition Title | 第2回 ECA 展 Evolve Conceptual Art Exhibition Vol.2 |
会 期 Period and Hours | 2024年5月12日-5月18日(7日間) 通常開催時間 9:30-17:30 ※最終日入場 12:30まで / 最終日13時閉会 May. 12, 2024 – May. 18, 2024 (7days) 9:30am – 5:30pm *Last day end time at 1pm – Last admission is at 12:30 pm |
会 場 Venue | 東京都美術館 ギャラリーA(B3階) Tokyo metropolitan art museum GalleryA (3rd basement floor) |
主 催 Organizer | 一般社団法人イヴォルブアート&デザインジャパン General Incorporated Association Evolve Art & Design Japan |
協 賛 Cooperation | 株式会社ツルカメ Turucame ltd. |
入場料 Admission fee | 一般500 円 (高校生以下・障害者手帳をお持ちの方と付添(2名)無料) 500 yen (Free:less than high school student, Admission for holders of a disability certificate and two caregiver) |
電子チケットをご購入された方は、受付で電子チケットを掲示ください。
なお、会場では当日券をご購入できます。東京都美術館受付ではなく、会場内の受付にてお声がけください。
最優秀賞
善の距離 Distance of Zen
許 芯蓉 Hsinjung Hsu
素材:砂、プロジェクター 、刷子、布、紙、カメラ
Sand, Projector, Brush, Fabric, Paper, Camera
審査員コメント
上野 友幸
この作品に説得力があるのはただ円を綺麗に10個100個と描くのではなく、30日間毎日描いた後に31個目を会場で描いて展示しているからである。それはコンセプトと作家自身の生活が結びついているのであり、その証とも言える成果を我々に提示しているということである。
円という仏教が昔から理想としてきた形態と、31日という古代エジプト文明から始まり現代の我々の生活の基盤となっている暦を上手く取り入れ、コンセプトと作品との関係を綺麗にまとめている。そして、素材が紙と筆ではなく砂ということはそれ以上に還元できない自然の支持体として、また生命の基盤として、根源的な要素だと言える。一方で砂そのものは円を描いた後も、崩して描き直すことが可能であり、1日が終わってもまた明日があるように、やり直し、改善できる人生を表しているようで、我々の感情を突き動かすものがある。更に『善の距離』というタイトルにも興味をそそられる。なぜなら、善は概念的なもので距離を測ることが出来ないからである。平常心を測る一つのメタファーとして、及び精神を鍛錬するものとして、この所作を繰り返すところに、精神世界を発展させてきた文化の根源すら感じるのだ。
藤井 孝行
本作品の特筆すべき点は、行為の前に思想がはっきりと存在していることである。円を描くことに伴う技術的な熟練度を作品のコアから外すことで、本作品がコンセプチュアル・アートとなる思想の部分をより強調している。「善の距離」というタイトルは、30日間にわたり円を描くという行為の映像と、会場に展示された31日目の円のインスタレーションという作品それ自体を超え、作家が関心を持つ心理的基盤に焦点をあてている。言い換えれば、我々に提示された作品は、作家のいう「美」を目指した「真」に基づく行為や結果のかたちにすぎず、重要なのは作家自身が関心を抱く、かたちのない「善」である。その意味で、本作品はまさにアイデアが作り手であり、それについて思考することがコンセプチュアル・アートの根元に触れる機会となる素晴らしいアートである。
庄司 みゆ希
この作品は、彼女が取り組んできた弓道の哲学と、日常生活における平常心の重要性を探求するアートとして非常に意義深いものでした。
素材の選択(砂、刷子、プロジェクターなど)は、作品のコンセプトを強調し視覚的にも魅力的で、砂を用いた円の描写は、心の状態を直感的に視覚化する手段として非常に効果的でした。
また、30日間の記録映像は、作家の成長と変化を視覚的に捉えることができ、観客に対してもそのプロセスを共有することができます。観客もまた自身の「善」への距離を考え、内省する機会を提供している点がこの作品の大きな魅力と言えるでしょう。
この作品は、内面的な成長と自己改善の道のりを表現する素晴らしいコンセプチュアルアートであり、弓道の哲学と現代アートを融合させた独創的な試みとして高く評価しました。
各作品の前に、コンセプト文を掲載しています。コンセプチュアルアートは、鑑賞者が作品と向き合うことで成り立ちます。アーティストの思考や背景に考えを巡らせて、作品をお楽しみください。
Before each piece, we have included a conceptual statement. Conceptual art comes to life through the engagement of the viewer with the artwork. Please contemplate the artist’s thoughts and background, and enjoy the pieces.
会場には、アーティストが在廊している時があります。
アーティストと会話することで、より作品の思考について、深い共感や思考のインスピレーションを知ることができます。
At times, the artist may be present at the venue. Engaging in conversation with the artist allows for a deeper understanding of the artwork’s thoughts, fostering empathy and inspiration for further contemplation.
審査員
上野 友幸
Tomoyuki Ueno
アーティスト、ベルリン在住
東京芸術大学大学院先端芸術表現修了、DAAD(ドイツ学術交流会)奨学生、ポーラ芸術振興財団在外研修生としてベルリン芸術大学アートアンドメディアのマイスター課程を修了。その後もベルリンを拠点に活動しながら、クンストラーハウス・ベタニエンや秋吉台国際芸術村でのレジデンスプログラムへの参加、第16回モスクワビエンナーレ・フォー・ヤング・アートへの出品、2022年にはベルリンのGalerie Martin Mertensでの個展を開催している。
庄司 みゆ希
Miyuki Shoji
アートディレクター、
Evolve Art & Design Japan代表理事
武蔵野美術大学 芸術文化学科卒、学芸員取得。震災を契機にアートプロジェクトを立ち上げ、企画運営とオーガナイザーとして、渋谷、NY、バルセロナ、ベルリン、パリで展示会を10年開催している。2017年、クリエイターやアーティスト集団の一般社団法人Evolve Art & Design Japanを設立、代表理事を務める。最近では、若手アーティストの育成と発掘を目的としたEvolve membershipにも力を入れる。
藤井 孝行
Tkayuki Fujii
インディペンデントキュレーター、フランス在住
慶應義塾大学文学部哲学科美学美術史学専攻卒。アートフェア東京やギャラリーでの展覧会に関わった後、渡米。ニューヨークのPratt Instutute Arts & Cultural Managementで修士号を取得。世界各地のアートフェア、展覧会および出版事業を通じて、美術館、財団、および個人コレクションの作品収蔵に従事している。