川沢 吾子 Ako Kawazawa

川沢 吾子

〈ここにニホンカワウソの等身大立看板がある※1 数は四十七※2 ニホンカワウソは絶滅種とされている※3 あなたは立看板を持ち帰ることが出来る※4 あなたが持ち帰ることでここからひとつがなくなる※5 あなたによっていなくなる※6 それについて※7 あなたのおもうこと※8〉  

素材:段ボール、ブルーシート

〈Life-sized standing signboards of JAPANESE OTTER/47standing signboards/JAPANESE OTTER are extinct species/You can take out one of them/So, one is lost/Because of you/about/What do you think? What do you feel? 〉 Cardboard , Blue poly tarp

上記の文字列は、作品の題名であり説明です。

※1立看板は自立する看板です。ニホンカワウソは食肉目イタチ科の哺乳類です。泳ぐのが得意で四つ脚で移動しますが、後ろ脚と尻尾で立ち上がることもあります。

※2都道府県の数です。ブルーシートには日本地図が記してあります。

※32012 年、ニホンカワウソは日本国によってもう日本にはいない生物だとされました。絶滅の要因として毛皮目的の乱獲、生息域の環境破壊などが考えられます。ただし、生存を信じていまでも 調査を続けている人達もいます。

※4持ち帰っていただくことで完成する作品です。裏に持ち手がついています。ビニール紐、テープなどもご用意しています。くれぐれも、捨て看板、放置看板にはされませんようにお願い致します。ニホンカワウソ立看板との帰り道をお楽しみください。

※5この場から立看板がひとつ減ります。日本地図模様のシートの上からニホンカワウソの姿を写したものがひとつ、なくなるだけのことです。

※6行為の結果として、いなくなった事実がこの場に残り、 持ち帰り、 立ち去るあなたは、それを見ないことも忘れることも自由です。

※7ニホンカワウソについて、いなくなることについて、あなたとニホンカワウソについて。

※8ニホンカワウソのいる日本 は、 ニホンカワウソのいない日本より良い国だと、わたしはおもいます。あなたのおもうところは如何でしょうか 。

「ニホンカワウソ」は日本を冠した名を付けられていながらも、この国とは距離のある生物になってしまいました。ただ、この距離は、対象が確かに存在した(する)からこそ測ることができるものでもあります。時間的、空間的、社会的、文化的にどれほど遠かったとしても。

この作品は、その距離を知るための試みです。

参考資料 「 ニホンカワウソは生きている 」 宗像充 旬報社
「ニホンカワウソ -絶滅に学ぶ保全生物学」 安藤元一 東京大学出版会
「カワウソ協会」などのweb サイト 他

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二ホンカワウソを制作の中心にしています。