いつまでも愛してる。
素材:毛糸(ウール、モヘヤ、コットン)、わた(コットン)、ポリエチレン
昨今のウイルスによるパンデミック以降、消毒や除菌が日常的になり、直接物に触れることに躊躇することが多くなりました。今後、さらなる未曾有のパンデミックが起こることを想像すると、人と人や人と物が触れ合うことが難しい状況下では、すべてのものがビニールに包まれているような状況になるのではないかと考えられます。
ビニール自体は簡単に消毒でき、ビニールの中は外気に触れていないため安心感があり、長期保管にも優れているという理由から、大切なものであればあるほど、ビニールの上から触れることがデフォルトになる未来が待っているかもしれません。
環境の未来は不確実であり、気候変動や森林破壊、世界各地での政治的不安など、様々な問題を抱えています。環境の変動によって、人間の心理も大きく左右されていくでしょう。
さらに、人間の心理について考えると、ぬいぐるみを見たり触れたりすることは、ストレスや寂しさを軽減する効果があり、心理的安定や癒しを与えることができるのではないでしょうか。
効果は個人差があるものの、子供の無垢な精神への回帰につながり、自分自身が抱いている感情がぬいぐるみに投影され、触れ合うことで癒されると考えられます。
私の作品は、一本の糸から形成される編み物で作られています。毛糸で編まれた編みぐるみは、ぬいぐるみと同様に親しみやすく、温かみを感じることができます。
そこで、本作では、あえて親しみやすいウサギやクマなどの編みぐるみを、天然繊維素材の毛糸を使用して制作し、ビニールの代わりにポリエチレンの袋で圧縮します。圧縮することによって、編みぐるみに触れたい欲求が叶わないため、触れたいのに触れられないという相反する心理作用が働きます。
また、天然繊維素材の毛糸は自然に分解されますが、ビニールなどのプラスチック類は自然に分解されないため、自然環境的に相反しています。
触れたい欲求が叶わない状況、自然に分解される素材とそうでない素材、長期保存が可能な世界での時間軸、これらによって生じる心理的な影響、そして意識や視点の変化を提示すると共に、環境の未来を表現しています。