畦地 拓海 Takumi Azechi

What reminds... 

What reminds… 

素材:樹脂、ビーズ、フィギュア、LED照明
制作協力:アシダマドカ

「記憶」とは、少しずつ薄れ忘れていってしまうものではなく、その記憶の上に知識や経験、時には別の記憶が⼊り混じり、時間と共に降り積もって変化していくものなのではないかと考えます。時間が経過することで原初の「記憶」に積もった後の形は、時に違った「記憶」に⾒えたり、またその原初の「記憶」を不意に想起させたりしながらも確かに存在しているのではないかということに興味を持ちました。

原初の「記憶」は、はっきりと鮮明な輪郭や⾊を伴う形であり、積層後の「記憶」は、はっきりとした輪郭までは思い出せずとも、積層後の形に内在するものの特徴や要点を残したシンプルな形であると考えました。原初の「記憶」と積層後の「記憶」の間にあるものは、果たして余計なものなのでしょうか。やはり原初の「記憶」こそ⼀番美しいものなのでしょうか。過去の「記憶」は美化されてしまうのでしょうか。今が⼀番美しいと感じることはないのでしょうか。

本作品では、作品の内側からの光によって原初の形や記憶を、外側からの積層によって積層後の現在の形や記憶の輪郭を浮かび上がらせ、それぞれの形や記憶を⾏き来することにより、2つの形の間に流れる時間を可視化しました。内側からは未来の形を認識することが出来ず、外側からも同様に過去の形は認識することが難しい。まるで記憶が曖昧になるかのように、積み重なる時間によりぼやけて⾒えたりします。

本作品は、⾃⾝の⼤切な「記憶」との関係性を⾒つめることの出来る装置です。

Artist information

1990年京都府生まれ
2016年富山大学大学院芸術文化学研究科を修了
遺跡や壁画、仮面等にみられるプリミティブな風合いに、日本やタイの漆芸技法を織り交ぜた作品を制作している。
2018〜個展、京都/ 2020〜2022 MONSTER EXHIBITION 入選(2020入賞)、東京 / その他、国内外での個展やグループ展、公募展への出展多数。