ランドルト環の時計
素材:金属、アクリル板、PLA樹脂、時計、ステッピングモーター
視力検査機から2m離れた踏み台に足を乗せてください。そうすると、視力検査機から時計の秒針の音が鳴ります。この視力検査機は、時間をはかるものです。視力検査機に存在するランドルト環が上から順に、時計の「時針」「分針」「秒針」の役割を果たし、回転しています。秒針の音をきっかけに、視力を「はかる」ものから、時間を「はかる」ものへ変化します。
時間は絶え間なく連続で流れるものであり、地球の自転や惑星の公転、そしてアナログ時計の動きのように、円を用いて表されることが多いです。そんな時間をはかることは、円のように流れる時間というものに、強引に切込みをいれ、その隙間を見る感覚があります。この作品では、その隙間がランドルト環で表されています。
そんなランドルト環ですが、視力検査の際に、ランドルト環が小さくなるにつれ、ランドルト環の切れ目が見えなくなり、円に見える経験をした事があると思います。それは、年齢とともに視力が低下するにつれ、ランドルト環が円に見える大きさは次第に大きくなっていくことがほとんどです。
この時計も例外ではなく、やがてランドルト環の時計の秒針が円に見え、次に分針が円に見え、そして時針が円に見える時が訪れるのかも知れません。そんな、時間をはかろうとしても身体が追いつかず、はかれなくなった時、時間本来の姿を感じることが出来ます。
Artist information
日常に存在するものをモチーフとし、それに虚構性を持たせ演出をする制作を行っています。視力検査機に存在するランドルト環が時計のように動く「ランドルト環の時計」をはじめ、電子レンジの中で食材が動き出す「レンチン・シアター」や、テニスボールの中にテニスボールが落ちていた場所を再現した「箱庭のテニスボール」等の作品があります。