ダンス・ノーテーション
素材:画用紙、墨、ペン、トゥシューズ
私は踊りながら絵を描くダンスペインティングという行為を通して、身体で描くことのできる最良の描線や動き、その線を描き出すのに最も適した音楽を、日々探し求めています。それらの描線と音楽と身体の調和についての試みとして、この作品では、トゥシューズを用いたダンスペインティングで描いた舞踊譜を、絵画として再構築したいと思います。
舞踊譜とは、まだ映像技術が発達していない時代に、舞踊の動きを紙面に記号を用いて記録したものです。バレエでは体幹や片足を軸に、足や腕を回す動きが多く、この動きを描線で表すと、同じ大きさの弧を繰り返し描くことができ、幾何学模様を構成することができます。有機的な人体から、無機的な模様が生み出される様子は、人体に潜む黄金比やフィボナッチ数列、フラクタル構造のような、数学的な要素を垣間見ることができます。また、ダンスにとって欠かせない音楽は、楽譜というレシピのもと演奏されます。現代音楽の作曲では、図形楽譜と呼ばれる、五線譜ではない自由な図形やテキストを用いて描く楽譜が使われることがあります。この作品では、図形楽譜の手法を用いて、身体が描き出す幾何学模様を楽譜に対応させ、キャンバスに描き出された楽譜、現代版の舞踊譜ともいえる絵画を完成させたいと思います。そうすることで、身体や音楽の、有機的かつ無機的な性質やシステムについて探究し、その奥に潜む美や神秘を解き明かすための、第一歩を踏み出したいと考えています。
Artist information
ダンスペインター/パフォーマー
バレエダンサーを経て舞台監督助手を務めるうちに「踊っていると足元に色彩が広がる」というイメージが思い浮かぶようになる。次第に、トゥシューズ等で踊りながら絵を描くパフォーマンスを確立し、ダンスペインターかつパフォーマーとして、国内外のイベント・舞台・映像・写真作品等へ出演。
アートイベント「Festa Scramble by R99」にて外務大臣賞、主演映像作品「わたしはどこから来たのか、何者なのか、どこへ行くのか、そしてあなたは・・・」5ヶ国の映画祭にて最優秀長編映画賞受賞、多数入選。
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