じゃのみち janomichi

インフラストラクチャ(見えがくれする7つの立方体)

Infrastructure (7 cubes with the hidden system)

素材:蛇口、塩ビパイプ、アクリル塗料
Faucet, PVC pipe, Acrylic paint

本作品は、生活や社会を支える基本的かつ重要なシステムに対する、認識の困難と危うさがコンセプトです。

2024年1月1日に発生した能登半島地震では、長引く断水が被災地の生活を困難なものとし、その影響は現在も継続しています。蛇口をひねっても水が出てこない絶望感は想像に余りあるものですが、その直接の原因が「配管の老朽化」「耐震化の遅れ」であり、事態を招いた要因が「予算と人員不足を理由とする点検・整備の不行届」と知れば、政策と行政に対する憤りを覚えるとともに、状況そのものに対する行き場のない苛立ちを覚えます。

インフラストラクチャは社会や生活を支える設備や制度を含むシステムですが、その大部分が物理的に壁の裏や地下に隠蔽される性質であるが故に、想像力を働かせない限り意識されません。蛇口をひねって水を汲むとき、給水管がどこを経由してきているのか、それらが社会資本としていかなる制度に基づいて実現しているのか、考えずとも安全な水を享受できるからです。

翻ってインフラの存在が強く意識されるのは、その不在(不全)が顕在化したときです。能登半島地震のように自然災害によって明るみに出た例にとどまらず、直近で2021年10月の和歌山県水道橋崩落事故、2018年7月の東京都水道管破損事故などを省みるだけでも、インフラ維持管理の欠如、すなわちライフラインに対する我々自身の認識の甘さが招いた深刻な事態を思い知ります。

身近なインフラストラクチャを媒体として、その背後にあるシステムの見えがくれする性質を浮かび上がらせます。