uki

生成拡張と縫合写真

Generative Expand and Stitched Photographs

素材:写真紙、糸
Photograph, Sewing thread

本作は、私たちが普段の移動中にカメラで撮影した写真と、その写真をPhotoshop上で生成拡張した画像を、それぞれ印刷しミシンで縫い合わせた縫合写真です。

2023年9月、Photoshopに画像生成AIサービスを応用した「生成拡張」の機能が追加され、テキストプロンプトを利用し画像コンテンツを非破壊で追加、拡大、削除できるようになりました。それは一見すると魔法のようで便利な機能です。しかし、私たちは自らが撮った写真を生成拡張した時、違和感を感じました。なぜなら生成拡張した後の画像には、撮る側がファインダーを覗いた先にある実在する世界と、生成拡張によってシームレスに広がった実在しない世界の、2つの相容れない世界が共存していたからです。つまり写真を生成拡張すると同時に、その写真からリアリティが失われ、フィクションになっているのです。私たちは、そこに”非破壊”とされる画像の破壊が存在するのかもしれないと考えました。

私たちはこれまでも何度か縫合写真に取り組んできましたが、そこには最終的に機械的に印刷される無機質な写真という物自体に、縫い合わせるという身体行為を通してアプローチすることで、ただの記録媒体から私たちの経験を経た記憶を含む媒体になおすという意図がありました。本作において縫合する行為は、生成拡張によって一方的に隠されてしまった実在する世界とフィクションの境界線をアナログ的に繋いでいます。それは、私たちの記録でも記憶でも無い生成拡張した画像を、デジタルネイチャーに向かう今の時代の記録として、私たちの撮った写真と並列に扱うことでもあります。そんな私たちが生きる今の違和感を記録し考える作品を目指しています。