ウルファート・ジャンセン Ulfert Janssen

Asymptote

素材:金属、木材、アクリル絵の具

Asymptote (アスィムトウト:漸近線)とは、ギリシャ語「アサムプトス“asumptōtos”」に由来する、「関連する要素が限りなく接近するが、実際には 1 つになることはなく、別々に無限に向かっている」という概念を表します。

本作品は、この現象が、私たちの住む現代社会でも起きていることを表現するものです。

急速な気候変動により、高水位と干ばつ/山火事が世界中で発生しています。しかし、「水」と「火」という2つの要素が同じベクトルで1つになることはありません。それらを融合させたいという衝動を感じる一方で、人間として、私たちは自己破壊して全体像を見失う傾向があり、人為的な気候変動と短期的な思考/利益によって、2つの要素をさらに引き離します。

私たちは 4 億年以来、あらゆる意味で水と深くつながっており、人生のはじまりは母体の羊水の中で過ごします。水は祝福であると同時に危険でもあります。気候変動の脅威が高まる中、すべての水位が上昇し、人々に課題とさらなる危険をもたらしています。

火は私たちに暖かさ、温かい食事、たき火の周りでの帰属意識を与え、何十万年もの間、文化を交換する場を提供してきました。一方で、火は想像を絶する破壊力を持っており、近年の山火事や干ばつにより、広大な地域が破壊される災害を引き起こしています。

すなわち「水」と「火」は、どちらも創造と破壊の相反するパワーを持っているのです。

Asymptote三部作の作品では、コントラストと緊張感が重要な要素です。

水位の上がった海、炭化した木、そして2者を中央で分断する裂け目は、私たちの美しい自然環境に脅威が近づいていることを示しています。それらは異なるレベルに浮かんでいるように見え、水と火という2つの要素間の対話を引き裂く緊張を生み出しています。

「水」、「火」、そして「鉄」「木」「時間」は、本作品の構成において重要な役割を果たし、一対として表現することが困難な、2つの相反する要素を1つに結びつけることによって、この絵に命を吹き込みます。本作品では「水」と「火」という、異なる2者のコントラストが相手の性質をより際立たせ、2つの相反する要素が、1+1=3 という矛盾語法で表現されるような、新たな共生に入ることを表現しています。

本作品は、ウルファート・ジャンセンの作品の特徴である、自然および人工的な腐食プロセス(水・時間)にさらした鉄プレート、および、木という古代から存在する壮大な素材を火にさらすことによって変化させた、独自のキャンバスをベースに、力強い構図、鮮やかな色彩、躍動感あふれる筆遣いで、Asymptoteという概念を表現しています。

Artist information

ドイツ人アーティスト。スイス在住。
北海沿岸のイーストフリージア地方生まれ。幼少時から、絵画、木工芸の才能を認められ、12 歳からドイツ人アーティストのBodo Olthoffに師事する。Art Center College of Designに進学後、ファインアートを学ぶと同時に、著名コンセプト アーティストの Scott RobertsonとNeville Page等の指導の下、プロダクト デザインの学士号を取得。
卒業後10年間は、芸術活動と並行して、ルノー・日産グループのカーデザイナーとして活躍。バルセロナ、ソウル、東京で勤務し、数々のコンセプトカーや製品化モデルのデザインを担当した。2012 年、アーティストとしてのキャリアに専念することを決意し、スイスに自身のスタジオを設立。以降、ドイツやスイスのギャラリーにおける個展・グループ展等で作品を発表しながら、欧州のパブリックアートコンテストに参加するなど幅広く活動している。

彼の作品は、コントラストと融合を大きなテーマにしており、自身で開発した酸化鉄プレート、および、炎によって表面を炭化させた木など、独自のキャンバスや素材を使った絵画や彫刻を特徴としている。彼のカラフルでコスモポリタンなバックグラウンドは、アーティストとしての独創的なアプローチと、異なる世界を彼の作品において結びつけることへの継続的な探求心に色濃く反映されている。

Ulfert Janssen
German artist. Living in Switzerland.
Born in East Frisia region on the North Sea coast. From an early age he was recognized for his talents in painting and woodworking, and from the age of 12 he studied under the German artist Bodo Olthoff. After studying fine arts and design at the Art Center College of Design, he earned a Bachelor’s Degree in Product Design under the guidance of renowned concept artists such as Scott Robertson and Neville Page.

In parallel to his artistic practice, he worked for 10 years as car designer for the Renault-Nissan group in Barcelona, Seoul, and Tokyo where he has designed numerous concept cars and production models. In 2012, he decided to focus on his career as a multidisciplinary artist, and established his own studio in Switzerland. Since then he has exhibited his works in various solo/group exhibitions in Germany and Switzerland, and participated in several public art competitions in Europe.

The main theme of his artwork is ‘Contrast’ and ‘Fusion’.
He works predominantly in painting and sculpture using rusted metal and charred wood, prepared by himself as special canvas and material for the artworks. His colorful cosmopolitan background is visible in his inventive approach as an artist, and his continuous explorations to bring different worlds together in his artworks.