高橋 一矢 Kazuya Takahashi

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素材:キャンバス、ケチャップ

ロシアのウクライナ侵攻により、私は戦争について考えるようになりました。戦争とは、教科書やマンガ、アニメ、テレビなどのメディアを通じて、画像や映像のデータとして受け取られ、大量にイメージだけが消費されているものです。現地の様子は常に画面越しに伝えられ、道路上でロシア軍の攻撃を受けて炎上するバスや化学工場、血を流し倒れている人々など、全てが現実の世界で起きていることですが、メディアを通しているせいなのか、日本にいる私には現実味がありません。また、TwitterなどのSNSから流れてくる現地の画像や映像は、スマートフォンの画面を指でフリック、スワイプすると、戦争とは全く関係の無い世界が次々と表示され、数分も経てば戦争のことなど忘れてしまい、まるで他人事のようです。

この作品は、その自分自身の戦争に対する軽薄さを、ファストフードの手軽さと重ねて表現しました。大量生産され、手軽に手に入るハンバーガーをモチーフにして、キャンバスにケチャップでドローイングしています。ケチャップは、ファストフードであるハンバーガーを表すだけでなく、赤い色は戦争で大量に流れた血を想起させます。また、赤いトマトケチャップは19世紀にアメリカで大量生産されるようになり、ケチャップはアメリカのものというイメージが定着しています。

キャンバスに塗られ、絵画のメディアとして使用されることにより、これらのケチャップは「食品」から「アメリカ、戦争、血」など、様々な意味を含んだものに変化しています。キャンバスのドローイングは、反戦、平和への祈りの象徴である折り鶴の展開図です。折り鶴は、戦争や自然災害が起きたときに現地に送られます。折り鶴は、「あげる側」の達成感が重視されてしまい、「もらう側」は迷惑になるという批判を浴びてしまうことがありますが、この作品では、その祈る行為の痕跡を大切にするため、その折り鶴の展開図を描くことで「鶴を折る行為」のみを取り出しています。

自分が当事者ではないとしても、私は描くことを通して戦争を批判し、誰かの平和を祈ります。